元   さ   ん   の  山  紀  行
大 日 岳 (2,501㍍)
<富山県上市町、立山町>
平成16年08月30日



 台風16号の事もあって、「燕岳・大天井岳」行きを取り止めて、「大日岳」行きとした。国道8号線庄川の温度表示が28℃、神通川が31℃、常願寺川が25℃が示すように、早朝からフェーン現象で暑く、この後の事を思うとうんざりだった。
 しかし、称名の駐車場に着いても、登山口から歩き出しても、台風の余波を感じる風は全くなく、不思議な感じだった。何時もなら、日焼け、虫対策、転んだ時の対策として長袖を着るのであるが、今日ばかりは半袖のТシャツ一枚で歩き始めた。そのかわり日焼け止めクリームを満遍なく塗った。(塗ったはずだったが・・・。)

牛首尾根の標識
牛首尾根を行く
 大日平小屋まで2時間半、大日岳頂上まで5時間の予定で出発する。大日平まで20人程の下山者と擦れ違ったが、皆「台風」の事と強風を盛んに告げられた。殆どの方々が県外のようで、道先の状況を説明して下さり、有り難く受けた。

 何時もの事ながら、最初だけは調子がいい「山ノ神」だが、過去に雷鳥沢から奥大日岳・大日岳を経由して称名に下った事しかなく、その一度だけのこの山域の経験では、かなりの不安があったようだ。

薬師岳が見えて来る
大日平が始まる
 猿ヶ馬場・牛首を経過し木道に達したのが、登山口から1時間25分余で、まずまずのタイムである。鍬崎山が見え、薬師岳も見えて来る。無風の状態からようやく心地よい風にホットした瞬間でもあった。この木道は結構長いのである。正面に見える山も、峡谷を挟んだ天狗山であり、大日平山荘かと思っても、弥陀ヶ原ホテルや立山荘なのである。夏のお花はもうない。探せば青いリンドウが可愛く咲いているだけ!

 大日平山荘前のベンチでは、若い男女3人のパーティーが食事をしていた。「これから大日ですか?」と声を掛けられ、「はい!」と答えたが、やはり何か言いたそうであったが、山頂辺りを見渡している私に諦めたようであった。
 昨日の「いさかい」の事もあり、必要な事以外殆ど会話もなく、黙々と歩くだけであった。木道が切れる頃から、徐々に「山ノ神」のペースが落ちだし、「水場近し」の標識手前から、完全に遅れだした。水場にリックを置いて迎えに行ったが、今日ばかりは私に担いでもらうわけにはいかないようであった。


大日平の風衝草原を行く 水場で休憩 大日平と薬師岳 大日小屋を目指して

 意地もあって、山ノ神は水場で休憩もせず通過していってしまった。最後の水場まで我慢の登高である。その水場で一息入れたが、そのあとの目標となる「大日小屋が見える。」まで結構時間を要するのである。「剱が見えるのは10時頃まで!でも、今日は風があるから・・・。」と急かしながら、足の上がらぬ「山ノ神」には、イヤミに取れたか、ブツブツ言っているように思えたか分からないが、私としては、ここ何年も大日岳から、剱岳をまともに仰いだ事がないのであるから、心の中では焦っていた。鍬崎山や薬師岳が大日平・弥陀ヶ原の上に整然と見えても、剱岳だけは別なのである。また、稜線に出て立山や毛勝三山が見えても、剱岳は見えない事が多いのである。

鞍部から山頂へ
左・奥大日岳 右・立山
 大日小屋が見えても未だ15分くらいかかる。だんだんと強くなって来た風に、帽子を飛ばされないように手で抑えながら先を急いだ。一足先に稜線(大日岳と大日小屋の小さな鞍部)に出て、下から上がって来る「山ノ神」に、両手で大きく○印の合図をした。久し振りの大日岳稜線からの剱岳を見たのである。
 今年6月も「剱のてっぺん」は見えなかったのであるから、嬉しさでいっぱいである。風で吹き飛ばされないように、帽子をリックに入れてタオルを頭に巻いた。今見えても、チョッとの間にガスに隠されてしまう事もあるから、シャッターを切りながら頂上に向かった。
 “剱・つるぎ!” と言っている私だけに、冷戦も暗黙の内に停戦合意がなされ、剱をバックに写真を撮りまくった。しかし、やはり心配が当たり、10分もしない内に気流が下から湧いて来て、あっという間に山並みを覆ってしまったのである。
待望の剱岳をバックに
 「またガスが切れるよ!」と、ウサギギクやリンドウをそっちのけにして、山頂に急いだ。「お腹がすいた!」食べれる物なら何でも良いというくらいに、口の中にどんどん入れた。「山ノ神」が隠し持って来たビールも、今日ばかりは1本(350ml)を一気に飲み干した。「剱が出た。」「また隠れた。」の繰り返しにも、刻々と変わる剱岳の風情に酔いしれた。しかし、私がカメラに収まる時だけは、タイミング悪くなかなか全容を見せてくれなかった。
 出発時に遅くとも午後1時には下山開始としていただけに、10分オーバーは雨でも逃げれそうな感じだっただけにそう心配する事はなかった。その頃は、剣岳も毛勝山も後立山の山々もガスに隠れて全く見えないようになってしまった。でも、反対側は黒い雲に覆われつつも視界は良好であった。

 下りは「山ノ神」にしてみれば、かなりきつかったようであった。その我慢が切れてしまったのか、大日山荘手前のベンチで勝手に大休憩となってしまった。暗雲立ち込めて来たのに何をモタモタとしているのかと、戻って探しに行った頃から、雨が降り出してしまった。「やはりまずかったのか!」とでも思ったのか、突然木道を走り出したが、木道が切れた頃から足を引き摺るようになった。「登山口はまだか?」に、「もうこの山に来なければ!」などと言わなくても良い事をまた言ってしまった。


剱岳 Ⅰ 剱岳 Ⅱ 剱岳 Ⅲ


剱岳 Ⅳ 剱岳 Ⅴ 剱岳 Ⅵ






■□■コースタイム■□■
高岡5:30=称名P(6:45~7:05)=登山口7:20=猿ヶ馬場(8:00~05)=牛ノ首(8:25~30)=大日平山荘(9:20~40)=水場(10:20~35)=最後の水場(11:00~10)=鞍部12:10=大日岳頂上(12:30~13:10)=鞍部(13:25~35)=最後の水場(14:15~20)=水場14:45=大日平山荘(15:25~40)=牛首(16:10~20)=猿ヶ馬場16:40=登山口(17:20~25)=称名P(17:40~50)=高岡19:20

■□■同行者■□■
          比佐恵