元    ち   ゃ   ん   の   山   紀   行
毛 勝 山 (2,414.4㍍)
<富山県 魚津市 宇奈月町>  平成15年05月26日



 今年3回目の企画でようやく北ちゃんとの山行が実現した。彼は、私のHPの予定表を見ていてくれて、昨秋「とやま山歩き」完踏の「池ノ山」では擦れ違い、また「千石城山」でも行き先の変更もあってお会い出来なかった経緯があった。
 今春、初雪山の帰路、大地山頂で遭遇し、前日から山頂でキャンプをしていたシュンちゃんと3人で、朝日小川ダムと夢創塾の分岐まで一緒した事があった。シュンちゃんの “もう毛勝山に行かないの?” のメールがなかったら、この企画もなかったかもしれない。

 魚津市石垣から島地に出る時、横枕からやって来た何処かで見た事のある車の後についたが、それはシュンちゃんであった。彼の安全運転ぶりを拝見しながら片貝川を遡り、集合場所の片貝山荘に着いたら、もう北ちゃんが待っていた。阿部木谷の砂防工事が行われている最終地点まで車を入れ、邪魔にならないように配慮して止めた。何度か「毛勝谷」を歩いた事のある私を二人が持ち上げて・・・(ヨイショ!)私が先に歩く事になった。


板菱から毛勝谷を見上げる 板菱から大明神沢出合に向かう 大明神沢から三ノ又の広い雪渓を行く

     阿部木谷の左岸の林道に覆っている残雪や倒木を避けながら、また今にも崩れ落ちそうな大きなデブリも乗り越え20分程で最終堰堤に出る。もう何日かしたら崩落するであろう薄くなった雪渓を恐る恐る乗り越えて、板菱のど真ん中でアイゼンを履く。北ちゃんが見付けたシラネアオイが、板菱の岩壁に咲いているなど、思いもよらぬ目の保養が出来、曇り空でも何故かルンルン気分である。
 大きく雪渓が裂けている所を左岸寄りにトラバースして、春の終焉を物語るデコボコで薄汚い雪渓に駆け上がれば、あとはそう危険な所はない。阿部木谷が毛勝谷に名を変えるのは、板菱からなのだろうか、それとも板菱を過ぎてからなのだろうかわからないが、30分も行くと大明神沢出合に達する。
大明神沢出合から何時かは
大明神山へ登ってみたいのだが・

どちらが本谷かわからないくらいで、初めてこの谷に入ったり、ガスに迷わされると、まっすぐ大明神沢に入ってしまう恐れがある。3人しかいない不気味なくらいに静かな谷は、デブリのために、恐竜の背のような茶けてデコボコした雪渓である。昨年は、この地点を通過する時、2頭のカモシカが、デブリにやられて横たわっていた事を思い出した。私のGPSの大先生でもある二人は何やら衛星を受信する感度が悪いと言っている。私は、あまり詳しくないので、ニヤニヤしているしかない。
 同行のシュンちゃんは、今春、ターさんと宗治郎谷から大明神山に登っているが、私は、何処から登れば良いのかその機会を伺っている。金沢のDr.早川から、昨年この大明神沢からのルートを勧められたが、まだその機会を得ていない。今春も猫又谷釜谷からを模索したが、その時期を逃してしまった。いやその気になれなかった。


三ノ又で気合を入れる3人衆 急斜面のボーサマ谷を登る 後で寝転んでいるのは「北ちゃん」

     大明神沢出合から左折した感じでその雪渓は広くなり、だんだんと高度を上げて行く。さほど勾配を感じないが、振り返ると随分高度を稼いでいる。土石で汚れた右の谷もはっきりと見え、三つの谷が合流する所が三ノ又である。標高1550~1600㍍であろうか?この先800㍍の急斜面を登るのであるが、岩や雪魂の崩落だけが心配である。
 毛勝谷の雪渓は、白馬大雪渓とよく比較されるが、夏にはズタズタになってしまうこの雪渓も、スキーの出来る6月頃までは、標高差にして1200~1400㍍とも言われている。
 毛勝山のある片貝川に来るために、主要道路で4つの大きな河川を渡って来たが、午前4時台でそれらの橋にある気温表示計は17~19℃を示していた。その気温が示すように、今日の雪質は4月下旬~5月上旬と違い柔らかであった。トレースもなく気温の低い時は、ピカピカの急斜面は、ベテランと言えどもかなりの緊張を伴い、毎年必ずと言っていいくらい滑落や落石の事故がある。
 ゆっくり楽しみながらの今日のテーマ通り、15~20分間隔で休息を入れ、単独行や早駆けでは有りえない写真を惜しみなく撮る事にした。上部からの崩落を気にしながら、ポーズのリクエストまであるおおよそ緊張感が走らなかった。中でも初めてピッケルを使うという北ちゃんが、傾斜や高度が気にならず、恐怖感がないという。デジタルカメラ使用で、なかなか高度感を出せないという話題が出ていただけに、北ちゃんの目も、そのデジタル仕様ではないのかと、盛んにからかってみた。
雷鳥が顔を出したのだが

 時々、ガラガラと尾根から小さな落石がある中で、一度だけ右上部からの雪魂の崩落に、どちらに逃げようかと緊張が走ったが、幸い大きなクレパスの中に吸い込まれて行き事無きを得た。
小さな尾根で本谷とボーサマ谷に分かれて、益々急傾斜になるが、デジタル眼の北ちゃんが、今月上旬に「あらちゃん」が通らなかったルート(本谷)を希望したが、シュンちゃんとなだめすかして、通常のボーサマ谷を行く。“「ハイマツ」が見えたら鞍部だよ!”と言っておきながら、なかなか到達しない。でも、振り返ると、僧ヶ岳に続いて駒ヶ岳が良い感じで浮かび上がって来ている。“雨が落ちないうちに頂上に行きたいね。” 一歩一歩確実に足を前に送り出しておれば、息が上がろうとも高度を上げて行く。三ノ又から2時間を要して鞍部に出た。ハイマツを越えれば、曇りがちのお天気であっても頗る展望は良く、やっぱり「オッー」と声をあげてしまった。剱岳や後立山連峰の山々に、吸い込まれるようにカメラのシャッターを切り続けてしまうのである。お腹がすいたから、とりあえず山頂に行ってメシにしようと最後の力を振り絞った。


剱岳から手前北方稜線に 大好きな剱岳をアップに

     日当たりなのか、風当たりのせいなのか、標識と三角点のある山頂だけが何時来ても雪がない。休憩するに丁度いいのだが、先鋭な毛勝山のイメージからして拍子抜けするかもしれない。“ゆっくりやりましょう!” と車を出てから、殆ど食事らしいものをしていなかっただけに、さすがにお腹がすいていた。北ちゃん本職のチャーシューが美味しかった。「山ノ神」が持たせてくれたソーメンも人気があった。以外だったのは、ノンベー達がアルコールを殆ど持参していなかったのである。
 その優等生達の中で、逆に“今日だけは飲んでもいいかな!” と缶ビール一人1本分の計3本を冷凍して持って来ていた私だったが、イザ乾杯のために栓を開けたらまだ凍ったままで、無常にも泡だけが吹き出してしまい大笑いになった。“雨が降らないうちに、ガスが掛からないうちに、思うように写真を撮っておかなくちゃ~!” と言いながら、熱く語る「山の話」に立ち上がるはずがなかった。そのうち、北ちゃんが、39度の熱を出している「かーちゃん」をほったらかし来たと言うし、シュンちゃんは、仕事を休んで来たと言う。私は、「山ノ神」を他の山に追いやって来たと、山バカ達は家に帰れば、それに対しての仕打が待っている事を忘れて盛り上がった。僅かなアルコールでも、「山」を肴にすれば、あ~っと言う間に時間が流れた。


毛勝山頂でミニ宴会 毛勝山頂の標識・三角点と共に 剱岳をバックに(毛勝山頂で)

     毛勝谷からガスが湧き上がり、後立山も更に霞んだ時を、腰を上げる機会として、南峰に向かった。周りがガスで見えなくなりつつも、剱~釜谷までだけは、まだはっきりと見えていた。鞍部に降りて、僅か10分程の登り返しをハーハー言いながら駆け上がった。ハイマツに2405㍍の赤いペナントが結んであったが、GPSの大家である二人は、計器を使って最高点を探していた。太い樹木に登り、大猫山と鬼場倉ノ頭が見えると叫んだりもした。再び鞍部に戻りいよいよ毛勝谷の下りである。


一歩一歩確実に(ボーサマ谷) ボーサマ谷を下る グリセードを試したのだが

     下り始めは少し緊張するが、腐った雪だけに、踵から蹴り込めば、そうそう「ずる~」と行く事もない。ガスの覆われた急斜面に立ち止まって、お互いデジカメでパチリパチリ。もう張詰めた緊張感など何処かに飛んで行ってしまい、グリセード(あまり滑らない)、尻セード、走り出すなど思い思いの動作であっと言う間に三ノ又に着いてしまった。その先を急いだが、すぐ大明神沢で合いに着いてしまったが、GPSの緯度経度そして高度も違い、往路の時からの受信が可笑しいと嘆いていたが、その先に再び本当の大明神沢出合が現れ、視界が悪く何も見えなかったとは言え、あそこは何処だったのだと反省しきりだった。

大明神沢出合から板菱に向かう 板菱付近の雪渓

    雨も時折肌に感じたが、心配する程のものにならず、鞍部から板菱・最終堰堤に1時間余で、しかも、いろいろお喋りしながらだったが、意外と早く着いてしまった。
 単独行も良いけれど、気のあった山友との山行も実に楽しいものだと再確認しつつ、またの機会を約束して各自家路についた。






 ■■■コースタイム■■■
高岡4:00=片貝山荘5:10=林道最終デボ地点(5:30~45)=最終堰堤6:10=アイゼン6:15=大明神沢出合6:55=三ノ又(7:35~50)=鞍部(10:45~55)=毛勝山頂上(11:05~13:20)=南峰(13:40~14:15)=鞍部14:20=三ノ又14:45=大明神沢出合(15:07~15)=板菱15:30=堰堤15:40=車デボ地点(16:00~15)=高岡18:05

 ■■■同行者■■■
         シュンちゃん・北ちゃん