元  ち  ゃ  ん  の  山  紀  行
黒 岩 山 (1,623.6㍍)
<富山県朝日町、 新潟県糸魚川市>
平成14年06月24日




 一向に止まない雨。登山口に行っても降っていたら止めようと言う事で、8号線を走った。始めのうちはワイパーを回しながら、イヤな感じでハンドルを持っていたが、かすかに海側(北)が少し明るくなって来た。でも、後側(西)は、まだ黒い雲に覆われいた。
 しかし、県東部に入ってから何時の間にか、雨だけは止まったような感じだった。今日の目的地糸魚川小滝地内からヒスイ峡に向かうわけだが、これくらいの距離だったら、当然下道を使うのだが、今日は、又も出発が予定より30分程遅れ、高速か下道か迷ったが、雨で戻らなくてはいけない事も考慮し下道とした。今回は、何時でなく3時間も寝れたのだが、山ノ神はどうした事か(何時ものように)揺り起こさなくては起きなかった。

長い長い林道歩き

 国道148号線を、小滝駅手前の姫川に架かる大正橋を渡り、ヒスイ峡への案内標識通り右折し、瀬野田集落に入る。
 岡ルート明星山登山口の標識を右に見ながら、今度は、夏中、高浪ノ池方面と分かれてヒスイ峡方面に進む。
 国道148号線から、4キロ程で、食堂、トイレや明星山の岩壁が目の前に望める展望台のある所に出る。更に500㍍程行くと、フィッシングパークがあり、再び高浪ノ池方面と分かれる。小滝川に向かって下り、吊り橋が架かる所が明星山サカサ沢ルートで、尚も右岸を1キロ走り橋を渡って左岸に発電所がある。


ホタルブクロ シモツケ ギボウシ ムシトリナデシコ

 この先も林道が続くが、残念ながらゲートには施錠されており、長い長い林道歩きが始まる。あまり気にならないが、細かい雨が落ちている。
林道途中にあるヨシオ滝

 林道歩きでは、いつでも傘を差せるように、リックの横に取り付け、登山道からは、露の事を考えロングスパッツをリックの中に忍ばせた。
 “誰か知り合いでもいたら、鍵を借りて、長い林道を歩かなくてもいいのに!”などと言えば、“歩かなければいけないから、来る人も少なく、自然が多く残っているのだ。”と言いながら、林道を歩けば、ホタルブクロ、クルマユリが咲いていた。嗚呼・・ギボウシも、シモツケも・・・・・20分ほど進むと橋を渡り右岸へ。
 これだけお花があるのなら、山に登らなくても良いと言い出す。今からこんな言葉が出るから、先が思いやられる気がした。
中俣新道登山口

 左岸の上部に送電線が見えて来る。沢が現れ、その20~30㍍上流に、平成12年11月完成の真新しい小滝第2砂防ダムがある。オドソ沢で小さな橋を渡る。送電線が左岸から右岸に渡る。ピンク色のムシトリナデシコが、広まった河原一面に鮮やかに咲いている。

水芭蕉のオバケの横を通る
ぬかるんだ登山道を行く

 今は修復されているが、崩壊地があり、その先に、ゴーゴーと流れるヨシオ滝が現れ、少し腹ごしらえをする。5分も歩かないうちに西の方から厚い雲が下のほうに降りて来る。北の方は少し明るいが嫌な感じである。水の音がすると思ったらオソロ沢である。その先に砂防ダムが見えて来て、その右奥がチョット広い中俣沢である。10分程進んで橋を渡り左岸へ、その林道は長栂発電所への道だが、橋を渡って100㍍も行かない右側に中俣新道の標識がある。
ギンリョウソウ

 ここからがいよいよ本当の登山道である。草木に付いた露を避けるため、ロングスパッツを装着したが、私の頭の中には、5年前同じこのルートを辿った時、「マムシ注意」の立看板あり、どうも頭から離れなく、余計にスパッツに拘った。この事をヘビきらいの「山ノ神」に言おうものなら、パニックになってしまいそうなので黙った出発した。
 鎖が施された沢沿いから、草が生茂る道を行けば、すぐに青い三角屋根の小屋に出る。小屋を見て右方向に行けば、すぐ鎖の付いた急登である。鬱蒼と繁る樹林帯の中を我慢して登る。ブナがドンドン良くなってくる。ブナ君に抱き付いて手を延ばしても届かない。おそらく大人二人でもダメな程の太さである。
栂海新道分岐 右・日本海

 斜面に付けられた道が次第に尾根に変わっていく。午前9時標高750㍍付近で、乾いた喉を潤すために休憩する。方向も西から南へと変わって行く。日の当たらぬ所に、小さくて可愛いギンリョウソウが咲いている。標高1,000㍍に近付くと、登山道が緩やかになり、ぬかるんでくる。大きな岩に出くわし、水芭蕉のオバケにあったら、中俣山に近い。
ガスに覆われた黒岩山頂上

 中俣山の頂上と言っても、特別のピークでもなく、登山道沿いのトタン板に標識として置かれているだけである。それも、立てかけられたものでなく、今にも消えそうな文字で、草むらにそっと置かれているのである。歩き始めて3時間半にもなり、「山ノ神」も大分疲れてきたように感じられたので休憩を促したのだが、少し開けた所が良いと先に進んで行ったが、行けども行けども一向にそういう場所が見当たらず、それこそ適当な所で腰を下ろした。
 未だ標高差にして、600㍍以上登らなければいけないわけだが、なるべくその事は言わなかった。今度は少し下って、また水芭蕉のオバケの中を、足元を気にしながら歩行となったが、その先は、小さく狭い沢の中を歩く事になる。沢を登り詰める高度差は40~50㍍程しかないのだが、辛抱のしどころである。

シラネアオイ コバイケイソウ ミズバショウ ワタスゲ

 その流れがなくなって、乾いた尾根に出た所が、標高1,130~40㍍で、南に折れて明るいブナの尾根となる。谷を挟んだ向側(西)の沢筋には、未だ大量の雪が残っていた。立派なブナを見ながら気持よく歩く。ブナの大木がなくなる頃、側溝のような水の中を歩く。
 そこを抜け出し、パット開けた草原には、イワイチョウの葉が規則正しく綺麗に並んでいて、近くの木には、白い花を付けたタムシバが多く見られた。また小ぶりの樹木の中に入ったが、再び現れた草原は、ハクサンコザクラが、チラホラ咲き始め、ニッコウキスゲが、口を切るのを待っているようであった。
高所に上がるに連れ、ガスの中に突入した感じで、栂海新道の稜線は見えぬが、“もう少しだよ!”“頑張れ!”の言葉に頷いて登るしかなかろう。
 登り始めて5時間半にもなるというのに、“未だ頂上ではないのか。”と思う心に、樹木の丈が低くなり、チングルマが加われば、噂に聞く「雲上の楽園」は、もう少しであろうという心に、次第に変わり高まっていったのであろうが、足の運びが、それについて行っていない。
 しかし、何時も言うように足さえ前に出してさえおれば、何時は着くのである。
黒岩平でミズバショウと戯れる

 そして、いよいよ栂海新道に出た。右に行けば、黒岩山の頂上に、左に行けば黒岩平である。まずは頂上に行かなければいけないのだが、黒岩平の触りに、20~30㍍程進み覗いた所に、シラネアオイの群落があった。
 「山ノ神」それを見ただけで、ご満悦のようすだが、はやる心を抑えて、黒岩山の頂上に上がった。狭い頂上は、少し肌寒く、視界は全くない。5年前の快晴の時と比べて雲泥の差である。
 本来なら、あそこに初雪山、こちらに犬ヶ岳が見えるのだが・・・それはある程度予測をしてきたのだから、仕方がないのだが、チョットでもの気持は、“雨が降らないだけでもいいじゃない。”よりも欲張りになってしまった。
黒岩平に咲くミズバショウ

 何時雨が降り出すかもしれないし、一寸喉を潤し、簡単に食事を済ませ、記念写真を撮り、何時もの頂上滞在時間とは比べものにならないくらいに早々に立ち去り、先程の分岐に出た。
 何の変哲もない標識だが、「右、日本海」の表示は何故か嬉しくなる。黒岩平に入ると、ニッコウキスゲに、コバイケソウ、ハクサンコザクラ、チングルマが、咲き始めである。この先一週間位が見頃になるのではなかろうか?
 この花たちを傷付けないように、南下したが、すぐ雪渓になった。ドット流れる水の音と共に、水芭蕉がガスの中から現れた。見事な咲き栄えである。雪の切れた間にも水芭蕉が一生懸命咲こうとしている様子も見えた。  この雪渓が溶ける頃には、凄い景色になるのだろう。「雲上の楽園」を夢見て来た「山ノ神」も、この空に青空が欲しいなどと欲張りも言わず、霞みながらも、花々が咲き乱れる寸前ありながら、それなりに満足のようであった。

チングルマ ニッコウキスゲ イワイチョウ ハクサンコザクラ

 「雲上の楽園」ならず「雲中の楽園」は、じーっとしていると、雪渓の上では肌寒く、腰を下ろすにも、これから咲くであろう花々に申し訳なく、また、時間的にも余裕も少ないし、やや下り気味に休憩場所を探す事にした。  結果的には分岐から15分ほど下った所で、食事となったが、そうそうゆっくりもしておれない時間になってしまった。
 この場所を経ったのが、午後2時25分、標高1140㍍付近が午後3時、中俣山が午後3時45分、ロープや鎖につかまって、青い屋根の小屋に着いたのが午後4時50分、車デボ地点に戻ったのが午後6時25分だった。歩き始めから約12時間掛って戻ってきたが、「山ノ神」は、もう一度お天気の良い時に来て見たいと、次の黒岩山行の機会を狙っているみたいであった。車に戻って沸かして飲んだコーヒーは、苦労しただけ美味しかったように思う。




★★★ コースタイム ★★★
高岡4:00=林道入口の発電所(6:10~35)=ヨシオ滝(7:35~45)=中俣新道登山口(8:20~25)=青い三角屋根の小屋8:30=中俣山9:57=標高1,140㍍付近11:00=栂海新道分岐12:25=黒岩山頂上(12:30~1300)=黒岩平に遊ぶ=分岐13:50=食事休憩(14:05~25)=標高1,140㍍付近15:00=中俣山15:45=三角屋根の小屋16:50=林道16:54=ヨシオ滝(17:25~30)=車デボ地点(18:25~45)=糸魚川=魚津20:30=高岡21:30

☆☆☆ 同行者 ☆☆☆
          比佐恵