元 ち ゃ ん の 山 紀 行

長  栂  山  ( 2,267㍍)
富山県朝日町、 新潟県糸魚川市
平成12年08月20日



五輪尾根のお花畑  (シモツケ)

コバイケソウ

 栂海新道上のピークで長栂山だけが残されていた。入道山、尻高山、白鳥山、犬ヶ岳、黒岩山どの山も私にとっては、思い出多き山々である。
 黒岩山と共に長栂山は、「越中の百山」なれど、富山県側からの日帰り登山となると、とても私の技量では登れない。いや誰も登れないのではなかろうか!
マツムシソウ

 雲上の楽園と言われる黒岩山山頂に立ったことのある人なら、その先の長栂山に登りたいという気持ちを分かってくれると思う!
「越中の百山」の一つで、栂海新道上の未踏のピーク、これが今回目的の山。……

ワタスゲ


 平岩から長い林道を経て蓮華温泉に着いたのが、やや薄明るくなった午前5時。
 月明かりはあるものの、何故かどんよりした雲が気になったが、キャンプ場方面への林道を歩き始めた。7~8分程でキャンプ場を左に見て木道が始まる。アヤメ平の階段状の下りで思わずツルリと尻餅をついてしまった。
白高地沢で

 前方の朝日、長栂方面の上部がガスに覆われているが、振りかえると、雪倉岳がいい。一寸登ったと思ったらまたすぐ下りで、兵馬の湿原に出た。右に進路を取り瀬戸川への長い下りが始まった。
 出発から登らないで下ること1時間で高度を300㍍以上落した事になる。瀬戸川橋は、コンクリートの立派な橋で、古い地図上の「増水時の渡渉注意!」書きも気にしなくて良い。
花園三角点から五輪尾根


ゴーゴーと勢い良く流れる瀬戸川から離れて高度を200㍍位上げ尾根に出る。太めのブナや檜が目立ちその木々の間から気持ちの良いくらいの青空が広がってきた。樹林の中の木道や、高度を稼がず山腹をトラバースするようにして大きな沢の白高地沢に出た。
 見失わないように赤いペイントで印が施してあり、中州の大きな石に「白高地」と記してあった。また大きな流れある所には、橋がかけてあった。大きな雨が降ったらきっと渡れないであろう!
五輪尾根で

 少し行った所に「朝日岳7.1キロ、蓮華温泉4.5キロ」の標識があり、そこで、朝日岳山頂附近でビバークしていたと言う重荷を背負った中年の人に出会った。お互いに「この先長いよ!」の言葉を掛け合った。今日、最初に出会った人である。
ミヤマアズマギク

 その先、道が二つに分かれていて、右の道が登山道に間違いないと選び登り始めたが、だんだん急登になり終いには、手がかりも無くなり、大きな石が今にも落ちて来そうな感じでルートの誤り気付いた。下りるのもこれまた難儀で、落石の時どう避難するかを考えながらそーっと下りた。元に戻ると更に右側にしっかりした登山道があるではないか!消え掛けてはいるが、薄っすらと赤いペンキの矢印を見逃してしまっていたのだ。僅か25分のロスだったが、何故か、ガックンと体力を消耗してしまったような気がした。
エゾシオガマ

 気を取り戻して、カモシカ坂と呼ばれている、雨が降ったら滑りそうな溝のようなかなり段差のある樹林帯の中を根気良く登ると、やがて1700㍍で風衝草原に変わった。決して歩きやすくない長い木道が始まった。
 遠望の山々は、はっきり姿を現してくれないが、綺麗なお花畑の始まりである。この頃から、昨夜、朝日小屋で泊ったと思われる登山者とすれ違うようになる。
今年は雪解けが遅く
大きな雪渓を渡る!

 早朝は、「勇壮な剱岳の姿を見る事が出来た。」だの、また「下りはキツイ。」「未だ先は長いですか?」「川筋は問題無いですか?」等と中高年女性のグループの声が賑やかだった。
 花園三角点からの五輪尾根は、さほど急激な登りのように思えなかったが、朝日岳と長栂山との分岐への稜線は、遥か彼方のように思えた。
 山登りのいいところは、足さえ前に出しておれば何時しかひとりでに、目的地に到達するのである。目に入る汗を拭きながら、マツムシソウ、ニッコウキスゲ、シモツケの群落の中に入って行った。先に出会った中年女性等を含めても20人ぐらいの人達としか会わないのだから、可憐な高山植物は、まるで私の独り占めだ。
朝日岳と長栂山との分岐
吹上げのコル

 やがて今しばらく樹林の中に入りこみ(五輪の森の標識では、朝日岳2.9キロ、蓮華温泉9.1キロ)そこを抜けると、ハクサンコザクラ、チングルマ、リュウキンカなどのお花が咲き乱れ、「花園の王子様」気分で、雪渓から滴り落ちる水で一息ついた。
 お花の道から大きな雪渓を2ヶ所渡り、地図上の(白高地=八平衛平)なる地点を確認できぬまま、何時しか、吹上げのコルと呼ばれる稜線の分岐に出てしまった。
 ガスに覆われている朝日岳山頂を背にして、日本海への標識の栂海新道に入る。出発から6時間、変形したオオシラビソのトンネルの中を下る。残雪がある照葉の池附近は湿原である。ニッコウキスゲの中を歩きながら、この先の黒岩山周辺の情景が脳裏に浮かんでくる。
長栂山頂上

 長栂山は、きっといいぜ!と思う心と、早く喉元にビールを注ぎ込んでやりたい気持ち、そして、何処が長栂山なのだろうか?ドンドン下って遅い時間になったら、ビールどころではない。足早になって出た広い平らな所に、「長栂山」の看板があった。そして、その奥の小高い所に標識がないもののポールが1本立っていた。
 あっけに取られたものの、ここを本当の頂上と認め、歩き始めて6時間半、家を出てから11時間半、丁度冷え頃の缶ビールを、霞んだ大空に向かって、そして、よく頑張ってくれた私の足に乾杯した。五臓六腑にしみわたり、疲れより満足感にしたっていた。

ミヤマキンポウゲ

 長栂~黒岩間は、また何時の日の楽しみに残して、また、当初の予定通り、朝日岳登頂は、体力、時間的、天候の事もあり断念!「頂上着が1時を回っていたら、どうしただろうか!」と、考えながら、吹上げのコルに戻った時は、一面ガスに覆われてしまった。
 慎重に雪渓を渡り、今度来る時も、こんなに咲いていてくれているだろか分からない可憐な花々と、別れを惜しんで花園三角点に着いた頃から、雨が降り出した。
 雨具を纏わずカモシカ坂を走り通して我慢をしたのだが、白高地沢に近づき頃から大粒の雨になり、仕方なく上下を着こんだ。不思議なもので雨具を付けると雨が小降りに、また止んでしまうのだから可笑しい。
 瀬戸川からの登りの1時間強は、辛い辛い登りになった。


ハクサンコザクラ チングルマ リュウキンカ

 
マツムシソウ


ハクサンコザクラ


 ◇コースタイム

高岡0:25→市振(2:50~3:00)→蓮華温泉(5:00~20)→アヤメ平5:44→兵馬の平湿原(5:52~57)→瀬戸川橋(6:23~27)→白高地沢(7:10~25)→1700㍍風衝草原(8:15~25)→花園三角点8:45→五輪の森9:35→水場(10:18~30)→稜線分岐.吹上げのコル(11:08~15)→照葉の池(11:30~35)→長栂山頂上(11:50~12:40)→吹上げのコル(13:18~24)→水場13:53→五輪の森(14:22~27)→花園三角点(14:48~53)→白高地沢15:30→瀬戸川橋16:15→兵馬の平湿原16:50→蓮華温泉(17:35~18:25)→平岩→糸魚川→滑川→高岡
                        《帰路、糸魚川~滑川間 高速利用》