元   さ   ん   の   山  紀  行
猫 又 山 (2,378m)
<富山県魚津市、上市町、宇奈月町>
 平成16年08月09日




「元さん」 「行くのか行かないのか?」
「山ノ神」 「私の行けそうな所でないのでしょう?」の会話で決まった。
    雨にやられたら大変だし、午前中が勝負だと思っていたから、
「元さん」 「わかった!わかった!私一人で行くよ。」
    ところが、雨具・ツエルトなどなどを準備していると、「山ノ神」も準備をし出したではないか。
「元さん」 「では、中山・馬場島」とわかれよう。
「山ノ神」 「イ~ッヤ、付いて来る。」と言う。

  昨日までは止めておくなどと言っていたのに・・・・何時も直前なのである。
  それだけなら未だ良いのであるが、この時間から食料を仕込み始めたのである。
  自宅発4時、登山口5時半発でないと目的を達成出来ないと思っていたので、
  結局、イヤな顔を横目に、私一人で行く事になった。 しばらく振りである。

 夜が明けたなりのブナクラ取水口には、軽自動車が一台止まっているだけであった。  “ 降らなければいいのに!” などと思いながら、ちょっと修繕された鉄梯子を登ってブナクラ谷に入った。

 最初から足元がフラフラつまづいてばかりいた。大ブナクラ谷では滑って横転し水の中に浸かり、ポシェットのデジカメや、カシミールの地図も濡らしてしまった。「ありゃ~」であるが黙々と歩いた。「父の日」に娘からプレゼントしてもらったズボンは薄手で通気性が良くすぐ乾いてしまう。しかし、蒸し暑いからまた濡れて繰り返しであった。


ブナクラ谷を行く ブナクラ峠(鞍部) ブナクラ峠へのガラ場 ガラ場からブナクラ谷を見下ろす

 2~3年前の大規模なデブリの跡も、迷う事も無く通過出来、4回沢を渡るが一度もブナクラ本谷を渡る事はない。1時間半程過ぎた所で、疲れ切った顔をした男性2人と出会った。先の軽自動車の方々なのだろう。“ おはようございます。” と言葉を掛けただけで先を急いだ。最後の沢を渡った所から峠までは結構距離があるが、岩がゴロゴロした所に出ると峠はもうすぐである。

 峠には、地蔵様が祀られており休息するに最適な所である。また一気に後立山連峰の視界が広がる所でもあり、ここでUターンする人もあると聞く。今日は霞んでいて、何処が何処だかわからないほどぼんやりとしか見えなかった。


ブナクラ峠の地蔵さん 地蔵さんの横に屈んで ブナクラ峠から猫又山への急登 ブナクラ峠を見下ろす

 右(南東)に行くと赤谷山へ、今日は左(北西)に行く事になる。ブナクラ峠の標高が1745m前後であるから、猫又山山頂までの標高差が630~40m程である。
 私はブナクラから猫又山へはまだ経験が無く、前々から一度出掛けて見たいと思っていたのである。片貝川南又谷猫又谷から残雪を利用して登った事はあるが、今度はブナクラ峠から山頂に至るまでに、どのような剱岳が見えるのかが楽しみであった。雨の心配は薄らいだものの、上昇気流に乗って来るガスとの戦いのようなものであった。
 それにしても、ブナクラ修復グループは、よくもこんな所に登山道を付けたものだと思う程に、しばらくは急登が続く。そして、振り返ればブナクラ峠が鞍部である事がくっきりとわかる。
 草地の急登さえ過ごせばイヤな所はなく、高度を上げれば前方に東芦見尾根が見えて来る。そして快適な稜線歩き?となる。
 “剱岳を撮らなければ・・・” どんどんガスが上がって来る。振り返っては撮り、また進んでは撮りを繰り返したが、樹林帯の中から再び振り返ったが、もう剱は二度と顔を出さなかった。


赤谷尾根の奥に
剱岳が浮かび上がって来る
剱岳をズームアップ 森林限界は近い!

   2180mを超えた所から風衝草原が始まる。今年は少なめであろうが雪田が残り、チングルマ・ハクサンコザクラ・ハクサンフウロ・コイワカガミ・イワイチョウ・リンドウなどが花盛りであった。
 修復グループ所属の辰口氏からハクサンコザクラが咲き乱れている所があると聞いていたが、きっとこの場所の事だろうと思って、またまた撮りまくった。調子に乗って寝そべって撮ろうとした時、不覚にも足が攣ってしまい悲鳴をあげてしまった。
 しかし、剱岳が姿を隠してしまっても、ハクサンコザクラの群落は、私の心を癒してくれるには充分であった。シャッターを切りながら、雪田の上に行くまでは、お花を踏まずに歩くのが難しいくらいで、誰もいないウィークデーの山は、まるで独り占めであった。雪田の上からは踏跡を辿り山頂に向かうが、名残のニッコウキスゲが迎えてくれ、その先を行けば、釜谷山・毛勝山の稜線が見え隠れしていた。
 狭い山頂には、5年前と同じと思われる朽ちそうな標識が立てられていた。何が何でもその標識と記念写真を撮ろうとリックの上にカメラを置いたのであるが、ふらふらとしてなかなか上手くいかなかった。
 おにぎりを食べながら、じーっと剱が見えるのを待ったがやはりダメだった。しかし、毛勝山方面は時々ガスを切らし、その山容を少しは楽しませてくれた。


2180mを超えると風衝草原となる 東芦見尾根 猫又山頂で、
むりやりセルフタイマー撮影
釜谷山・毛勝山方面

 今一度風衝草原を下りながら、また、ブナクラ谷を下りながら、今度は秋の晴れた時に来てみたい、残雪時にもなどと、もう次の機会を頭に浮かべていた。
 ブナクラ峠から取水口までは遠い! 登りも下りもほぼ同じタイムでは、脚力の衰えを実感せずにはいられなかった。


風衝草原の残雪 ハクサンコザクラ チングルマ






 ■■■ コースタイム ■■■
高岡4:05=ブナクラ取水口(5:20~35)=ブナクラ峠(7:35~45)=猫又山頂上(9:45~10:30)=ブナクラ峠(11:50~55)=ブナクラ取水口(13:50~14:00)=高岡15:40

 ■■ 単独行 ■■