元  ち  ゃ  ん  の  山  紀  行
負 釣 山 (959.3㍍)
<富山県  入善町、朝日町>
平成14年01月07日




 今日は、私が母の面倒を看る番だったが、「山ノ神」をそれこそ拝み倒して、この絶好の登山日和を手にした。長い行程なので、早々に出発の段取りだったが、好天の贈り物の放射冷却で、カチカチに凍って車のドアも開かない状態だった。ぬるま湯を用意したり、暖気運転をしたりで、事の他時間を費やしてしまった。
 8号線の常願寺川の気温表示が、マイナス4℃だったように、新川広域農道のコンビニで、買物をしようと車から降りようとした時にも、ツルリと転んでしまった。アップダウンのあるこの農道は、信号機も少なく、速く走るのに使う事が多いのだが、今日ばかりは慎重な運転せずにはいられなかった。
 明日温泉からは、産業廃棄物処理業者の大菅建材までは、車が入るという事前情報があったので、「負釣山」行きにした経緯があるのだが、除雪はしてあるものの、ツルツルの1車線の道をユルリユルリと進む。処理業者の事務所まで1.4㌔。その先0.6㌔まで入れ、除雪車が、排雪またはUターンをした場所と思える広まった所に車を止めた。

車デボ地点オコ谷の峠への標識林道と山並みオコ谷の峠より
歩いて来た林道を振り返る

 そして、長い距離になるから、トーレスがなければ、「負釣山」から「御前山」に行き先を変えようと車の中では、思っていただけに、踏跡が確認できたので、ホーッとする。車デボ地点では、出発準備中に、ガラスの上を歩くような感じで、何度も転んでしまった。
 この湿り具合からして、前日のトーレスがあれば、急登地点ではきっとアイゼンが必要だと思い、この時期の低山では、珍しくザックの上に縛り付けた。
 歩き始めて10分。トーレスが消えた。がっかりしながら、深雪の中に足を入れていった。未だ気温が低いから膝上には来ないものの、先が思いやられる気持だった。
 左に進路を取り、次に見えた標識が「負釣山まで800㍍」で不思議の思いをして雪の中から穿り出して確認してみると、無雪期に車が入るオコ谷の峠までの距離を現したものだった。
 林道を忠実に進み、やがて確実に真上に林道があると思える斜面を駆け上がると作業小屋があり、その先に小さく案内板が見えた。そこがオコ谷の峠で、ショートカットしても1時間20分を要してしまった。(積雪150㌢)


オコ谷の案内板前で 大地山 負釣山山頂 朝日岳方面


大地山と初雪山 大地山への稜線 黒部の平野と富山湾

尾根道を下る チョッと一服 小川側の雪庇は未だ小さい 痩せた尾根を越えても
ピークは未だ遠い

 2年前の1月中旬に来た時には、車がこのオコ谷の峠まで車が入り、山頂までは、2時間足らずで登った事を憶えている。したがって、今日とは雲泥の差である。登山口の斜面を登るにも一苦労で、もちろん、標識が見えるわけがない。
 暫く行って、カンジキの下に硬いものを感じ、掘り返してみると、「一合目」の標識であった。
 小動物の足跡に導かれながら、杉の木の下を通るわけだが、雪量の関係で枝が頭につかえるから、腰をかがめて歩かなければいけない。下山時に気温が上がれば、水滴が落ちてビシャビシャになるかもしれない。
 後ろに「大谷山」が見えてくると、左には、小川を挟んで、「黒菱山」「大地山」から「初雪山」へ白いの稜線が浮かび上がって来る。
 焼山から黒菱山の稜線を歩いた事、朝日小川ダムから大地山に登った事、初雪山の頂を踏んだ事など、この山域には、良い思い出ばかりである。何時かは、この稜線を通しに歩きたいものだが、果たしてそんな日が来るのだろうか?
 その山々を見ながら、歩く足の下の雪は、125㌢のストックがすっぽりと沈んでしまい、カンジキの履いていても膝の上で、どれだけの積雪かはわからない。お天気がよく汗が滴り落ちる。下着が長袖、ズボンがフリースで、ロングスパッツ以外は無雪期の様相と変わらない格好である。
 高度を上げるにしたがって、深みに嵌ると胸まで浸かり、カンジキが木々の根に絡み、身動きが出来なくなり、涙が落ちそうになる。何故こうしてまで、登らなくてはいけないのかと、自分でも思うのはこんな時かもしれない。
 4時間で山頂に届かなかったら、引き返そうと思って登ったこの山も、もう少しもう少しと、自分を奮い立たせて足を前に出させるが、なかなかピッチがあがらない。
 小川側の小さな雪庇を気にしながら、反対側の斜面は、無雪期には広葉樹の葉の関係でさほど気にならなかったが、結構凄い角度で切れ込んでいる。急登の個所で、雪の上にトラ縄が僅かに顔を出していた。ここが辛い所で、駆け上がろうとしても雪が崩れてきて、おまけに下の所が硬い。嫌な感じの所で、帰りの事を思い、足場を造っておいたが、上から下を覗けば、滑ったら、真っさかさまに、谷へ吸い込まれていきそうな感じだ。
 小川側からの尾根が、合流する見晴の良い高台で、歩き始めてから、5時間半の午後1時半になったので、もう一登りする体力、時間もなくなったので、残念だけれど止めにした。
 しかし、その場所からも、剱岳は見えないものの、朝日岳、初雪山が雄大に見え、私の心を慰めてくれた。下山時には、先に述べた、嫌な所で、アイゼンを付ける事を怠った為、もう少しで谷底へ落ちていくところだった。でも、山を下りるに連れ、日が差し快適な気分は、何もかも忘れさせてしまった。

  ★★★コースタイム★★★

高岡5:45=新川広域農道(6:30~35)=登山口車デボ(7:35~8:00)=カンジキ装着(8:10~15)=分岐8:45=0.8㌔の標識9:00=オコ谷の峠(9:20~35)=一合目10:10=撤退地点(13:25~55)=オコ谷の峠15:20=分岐15:35=車デボ地点(16:00~15)=高岡


           単独行