絶好の登山日和になった。先週は、所用で出掛ける事が出来ず、二週間ぶり山行である。雪が少ないとはいえ、アルペン村や横江集落付近から雪が現れ、芦峅寺に来ると雪量がいっぺんに増えた。雄山神社横から、立山国立少年の家までの急な坂道も、すっきり除雪してあり、路面が綺麗に見え、カラカラのようにも見えた。
 しかし、立山公園線の気温表示が、マイナス3℃であったように、雪が溶けて濡れている所は、凍結しているのである。急ハンドルや急ブレーキをかけると、それこそ"ズルーッ"といってしまう。


大辻林道入口立山国立少年の家前の案内板城前峠への林道は圧雪状態長倉峠で
長倉峠から大辻山を仰ぐ奥長尾山頂上 1025㍍鍬崎山を仰ぐ有峰の方面の鉢伏山

 それでも、1月中、下旬のこの時期にしてみれば、快適そのものである。大辻林道は、圧雪車が入ったせいか、入口の段差さえなければ、車が入れるのではないかと、思うほど整備されていて、城前峠まで続いていた。鉢伏山や鍬崎山に日があたり、ドンドン景色が良くなってくる。城前峠からは、スキーとカンジキの跡でデコボコしていたが、沈む事を思えば、"何のその!"である。
 8時30分、突然音楽が鳴り出し、対岸の立山山麓のらいちょうバレーや、極楽坂スキー場のリフトが動き出したようであった。
 今日のように、一年に何回もないお天気だから、思い切り写真を撮ろうと思い、「鉢伏山」そして「鍬崎山」をバックにバシャッ、バシャッ…………
 長倉峠(長尾)まで、1時間40分を要した。  厳冬期本来なら、この峠まで来るのも難しいはずだが、「真冬の贈物」とでも言いましょうか…………。


快適に雪上を歩くむもう一息だ!立山弥陀ヶ原と称名渓谷大辻山頂で
剱 岳大 日 岳薬 師 岳大日、剱をバックに大辻山頂で


 長倉峠から、直接長尾山にトレースが付けられている。でも、まずは、ゆっくりとこれから登る「大辻山」を仰いだ。その左には、僅かだが、青い空にくっきりと、白く覆われた「駒ヶ岳」「僧ヶ岳」が見える。
 我々は、あえてトレースのある長尾山へは向かわず、夏道の標識⑨がある方向へ下った。未だ踏まれていない斜面を、気持よく登ると、長尾山からのトレースと②で合流した。相変わらず沈まぬ快適な歩行が続く。
 グングン登って行くと、③の奥長尾山に着く。名前の如く、長尾山よりチョッピリ高い。鉢伏山や鍬崎山が相変わらずいい。一休みするにもいい場所である。
 奥長尾山の先を進んでいくうちに、尾根から外れて、谷筋(谷側)にトレースが続いている。おそらく、前日も好天に恵まれて、締まった雪の中を、思いのままに駆け降りた跡に違いない。我々も、その方が楽だからそれに従う。


ダケカンバの中を頂上でお会いした岩田氏と大辻山頂で遊ぶ剱岳と大日岳


 しかし、今までこのルートを辿った事がない。もっと右(東)に行かなければいけない。と言いながら、小沢を乗り越え、何時の間にか⑧の所へ着いた。
 ⑨に行かず直接山頂へ向かうように、トレースも付いている。⑧から少し登った所に「鍬崎山」撮影の絶好ポイントがあり楽しんだ。雪が少し柔らかくなったような気がしたが、次第に急斜面になって来て、カンジキを装着する。
雪の壁を登る

 今日の一番緊張する所だったかもしれない。カンジキよりも、アイゼンやピッケルがあった方がいいくらいで、「山ノ神」がびびってしまう。大声を出して、指揮するが、へっぴり腰である。これでは、帰りが思いやられる気がした。カンジキ装着から20分余りで、ようやく大辻山に到着し、思わず「ワーッ」と、第一声を発してしまった。
 大日岳が何時もより大きく目の前に聳えていた。その特等席の左奥に、これまた剱岳が鋭い山容を誇っている。その左には、毛勝三山が悠然と構えていた。剱岳と毛勝三山の間には、真白な山容の後立山の白馬岳が眩しかった。右に目を転じれば、弥陀ヶ原の後方に、立山から薬師岳へ連なる山々が、真っ白く尖鋭に見える。
 この大辻山頂には、我々を追い越していった富山の男性一人が、我々より先に、今まで見た事のないような大展望を楽しんでいたのだ。長靴と小さなザックの身軽なスタイルの岩田氏は、登山歴が浅いと謙遜していたが、なかなかの健脚で、国立少年の家から2時間半余りで、山頂に着いたと語っていた。
大辻山頂から
臼越山、前大日岳への稜線

 怖い思いをして登って来た時は、大好きなビールも遠慮がちのはずの「山ノ神」も、この素晴らしい景色に、怖さを忘れてか、スイスイと喉を通っていくようである。風もない1361㍍の山頂は、この時期にしては、珍しいくらいに、何も羽織らなくても寒くないお天気で、「ブラボー」「ハッピー」「万歳!」何と表現すれば言いのかわからないくらいだ。

 「山ノ神」の思いとは別に、大辻山頂から延びる、「臼越山」「前大日岳」への稜線が、次ぎ行く山に数える事が出来ればと、こっそり胸の内に押さえ込んだ。
 素適な山頂の滞在も、あっという間に1時間40分も過ぎ、急な斜面を下るにつけ、もはや諦めの境地になったのか、右、左の掛け声通りに足を運び、難なく次の穏やかな斜面に下りていった。
 長い林道には、さすがに疲れを感じたが、車に着くまで、目を楽しませてくれた山々に感謝せずにはいられなかった。



 ★★★ コースタイム ★★★

高岡6:00=立山国立少年の家(7:30~50)=城前峠8:15=長倉峠(9:23~28)=奥長尾山(10:03~10)=⑧の標識11:00=カンジキ装着11:40=大辻山頂上(12:05~13:45)=長倉峠15:10=城前峠(15:57~16:02)=国小の家(16:25~35)=高岡18:50

 ☆☆ 同行者  ☆☆
        比佐恵