元  ち  ゃ  ん  の  山  歩  き
大 辻 山 (1,361㍍)
<富山県  立山町、上市町> 平成16年01月19日



   昨日は素晴らしい天候に恵まれたが、今日は一転平地では雨の予報である。“ お天気の良い時に行く山ではないの?” と言われるが、我家での大辻山は、お天気の悪い時に登る山のレパートリーに入っているのである。
 上では雪になるであろうし、それが奥長尾山まででも良しとして、もちろんツエルトなどの非常用のものは持参するが、コンロなどの炊事用具を外して臨んだ。私の頭の中には昨日の好天で、トレースがあるかもしれないと思ってはいた。
 城前峠までは、予想通り圧雪で30分ほどで難なく行く事が出来た。歩き始めに見えた大辻山も、ガスに覆われと思ったら、雪が舞い始めて来た。
ガスで大辻山のてっぺんが隠れた

 城前峠からは、一人分が歩けるトーレスが付いていたが、それは狭く、足の大きな私は、時々靴がぶつかりあった。時々そのトレースに、スキーのトレースが並列したり、交差したりしていたが、何人の人達が前日の日曜日に歩いたのかわからなかった。
 後に付く「山ノ神」が、“ 疲れているの?” などと私の歩きが遅いと促す言葉も出て、これは何時にない元気な事だと、今日の歩くだけの山行には逞しく感じた。
 長尾峠に近付く林道が大きくカーブしている所を、 前日のトレース(スキー)に沿って、ショーカットして再び林道に戻った所に、昨日誰かが作った小さな雪だるまが迎えてくれた。
 少々風が出て来たが、「国少の家」を8時20分発の遅い出発にしては、長尾峠まで1時間半の9時50分着だったので、大辻山頂にも届きそうであった。

「山ノ神」元気取り戻して歩き始めたのだが
「山ノ神」喘ぎ喘ぎで奥長尾山へ
 長尾峠で40cmくらいであった積雪が、⑨の標識がある通常の大辻山登山口では、いっぺんに増えて、70~80cmになっていた。
 カンジキを装着しても、時々ごぼる(雪の深みに嵌る)が、トレースに従った。新雪がトレース上に10cmほどになってきた奥長尾山への登りで、「山ノ神」のペースが急に落ちて来た。ブッシュが少々煩いのだが、そのような事が災いしているようではなかった。モヤって来て、降雪も強くなって来た。
 あれだけ元気であった「山ノ神」が、鉛の靴でも履いているかのように失速するには、体調の異変があるのではないかと思ってしまった。「脳や心臓」の異常を気にかけたが、そうでもないようであった。ならば「二日酔い?」を聞いてみたが、そんな事はないと言う。只、「ダヤイ」だけだという。
 やっぱり二日連続の山行は、「山ノ神」には無理なのかもしれないと思ったが、付いて来るというのだからどうしたものだろう。  
何も見えぬ大辻山頂で

 風雪が強くなり、雪も少し水っけを含んでいたので、奥長尾山で雨具の上下を纏わせた。“ 未だ11時だから、頂上には充分行けると思うが、体調が悪いのなら引き返そうか?” と「山ノ神」に問い掛けたが「大丈夫!」だと言う。水分を補給して、また歩き出す事になった。
 ⑤の標識を過ぎ、⑥の標識への急登に差し掛かる時、流石の「山ノ神」もリタイヤを宣言した。では、引き返そうか?それとも待機!単独で「国少の家」に帰る!と思案した。
 「山ノ神」は、「あんたは、ピークを踏みたいだろうし、自分が一人で下山するにしても、あんたは尚更心配だろうし、ツエルトを張ってくれたら、ここで待機する。」と言った。
 目の前の急斜面のトレースも、風に消されて只の斜面だし、ツエルトを樹木の小枝に縛り付けようとするが、吹き飛ばされて何度もやり直ししなければならないほどであった。
 ガス・コンロなどの火の気や炊事用具はないが、敷物などの置いていけるものは全部置いていく事にした。
 今度は、視界が悪いし、「山ノ神」の方が私に対しての心配をし出したが、1mの積雪があっても、前日歩いたトレースが所々あるだろうし、登りに1時間、下りに15分、予備に15分の合計1時間半で戻る事を約束して山頂目指して歩き始めた。
⑥への急登下で、ツエルトによる待機!

 杉林のある所以外は、風に煽られて、トレースが消えてなくなっていたが、時々出くわすトレースに思わずホッとする。⑧~⑨付近はしっかりとトレースが残っていたが、稜線に出ると全く無くなってしまっていた。でも、その稜線に沿って歩けば良いのであるから、そんなに心配するものではなかった。
 しかし、時間を気にするタイムトライアルのようなものでありながら、人質をとられているような不思議な感じの登高(行)である。お天気も悪いし、こんな時に登らなくても良いのになどと、自分でも思っているのである。
 山頂に立っても何も見えない。もちろん標識もない。三脚を立てて写真を撮り、菓子パンをかじって、すぐ下山する準備をすると、パーッと常願寺川側が開けた。後は視界もある程度回復し、何の問題もなかったが、先程歩いて来たトレースが、全くと言って良いくらい消えているのである。
 走るように下らなくても、それなりに下れば、5~10分の誤差が生じようが、「山ノ神」の待機場所に着くのである。上から黄色のツエルトを確認した時に、「おーい」と声をかけて、返事が聞こえた時には、ビールを片手に冷たく雪の中に埋まっていなくて良かったと思った。 

前方に見える高峰山の稜線を伺う
帰路。林道でも雪が強く降る
 過去に待機と言って、こっそりビールを飲んでいた事のある「山ノ神」であったが、ツエルトに着いたなり、聞いた言葉が寒いであったから、今回は流石にそんな事はないだろうと疑いもしなかった。
 ツエルトを片付け早々に下山を開始した。幾分午前と比べたら、空が明るいようであった。高峰山が墨絵のように見える。
 昨年の同時期に、先の鳥越峠までトレースのない林道を歩き、あの高峰山のてっぺんまで、よく登ったのだと自分なりに感心しながら、今はそんな事をしてまで、行こうという発想が起こらないと思った。
 長尾峠付近から、また雪が降り出し、城前峠あたりでは、リックの上にかなりの雪が積もった。




 ■■■ コースタイム ■■■
高岡7:00=「立山国立少年の家」(8:35~50)=城前峠9:20=長尾峠(10:20~35)=取付き10:40=奥長尾山11:10=⑤の標識11:40=⑥の急登下ツエルト(12:00~10)=⑥12:10=⑧12:20=稜線12:35=大辻山頂上(13:05~20)=ツエルト(13:40~55)=奥長尾山14:15=取付き14:30=長尾峠14:45=城前峠(15:35~40)=「立山国立少年の家」(16:10~20)=高岡

 ■■ 同行者 ■■
        比佐恵