元 ち ゃ ん の 山 紀 行
西 新 山 (1,110.3㍍)
平成 12年 03月 06日



 数日前の天気予報と違って、絶好の山行日和となる。
 41号線を庵谷バス停で左折し、陸橋で国道を渡る。集落の外れの神社近くで林道が、二又になっている。その周辺には、先月中ごろから降り始めた雪が、林道を覆っていた。
 近くのおばあさんに、「ここに車を止めていいですか?」「あんた、山かね!気付けていかれや!」の会話を残し、7時に車を離れた。
 放射冷却気味だったが、すぐカンジキを装着する。
 洞山へは、近年夏道がついたらしいが、当然雪に隠れている。杉林をトレースに従い進む。送電線の鉄塔附近に来ると、汗ばんだ身体に心地よい風が吹き寄せた。神通川の流れが見えてくる。杉の混ざった雑木林を抜けると林道に出る。(何故かしらトレースが消えた。)

 200㍍ほど林道を辿り、頃合いを見計らって、急な西斜面を駆け上がり、434㍍峰の反射板のある尾根に出る。反射板は景観を台無しにしているが、その当たりは、格好の休息地だ。神通川を挟んで小佐波御前山が、猿倉山から連なりいい格好をしている。右側に薄波山、その奥に見えるのは、高頭山かな?

 反射板から、洞山山頂までは、さほどヤブや急登に悩まされる事もなく、一寸広い尾根もお天気さえ良ければ問題ない。夏道開拓の目印として、2ヶ所「山頂まで1時間」「あと20分」の標識が樹木に括り付けてあった。広い山頂の反射板の鉄塔にも、「洞山頂上」の標識が付けてあった。また不思議な事に、頂上附近にハッキリした足跡があった。何処か分からないが,東から西に向かっていた。それがまた、樹木の間を私の行く頂上の西端で消えていた。そこから、トレースない鞍部に向かって一気に駆け下りる。

 鞍部から大谷961㍍峰に向かってまた登る。また、トレースが現れて広い大谷961㍍峰の西側へと続いていた。西新山がどっしりと目の前に立ちはだかっている。右手やや奥に戸田峰も見える。
 昨年もこの頂きで、西新山への挑戦を断念した辛い思いがある。当時は、午後からの天気が崩れる予報と、地吹雪が凄く、眼が明けられないような状態だった。
 今年もこの大谷961㍍峰から眺める西新山は、遠くに感じ果たして何処から取り付けようか、時間があるのだろうかとチョッピリ不安であった。

 9時35分大斜面を一気に下りる。木々の間から林道らしいものが見え、木にぶら下がりながら下りる。ここが大亦林道の最終部か!右へ行ったり左へ行ったりしながら、大亦谷へこの林道をショートカットするため、また雑木と杉林の中へ突入する。
 大亦谷最上部の林道から、大きな杉林に入るのだが、コンパスを使って南から南西方面を目差した。
 でも、何となく帰りが恐く所々に目印のテープを付けた。これが結構時間を費やす。「あーでもない、こーでもない」と言い聞かせながら、杉林を貫けて猪谷川側に出る頃から、足が攣り始めた。広いブナ林の尾根で時間との戦いになった。「諦めようか」「ここまで来たもの」
3度目の挑戦だし、もう来る事もないだろうし、もう少し頑張れ!


(左)
西新山頂上で。(バックは、北アルプス)
(右)
大谷961㍍峰から、西新山。



 足が上がらないから、当然高度も上がらない。一歩一歩の積み重ねの6時間半掛けて着いた頂きは、戸田峰こそ木々の合間にしか見えなかったけれど、遠望なれど北アルプスの山々は、何時見てもいい。今日の苦労した頂きから見る眺望は、毛勝三山から笠、乗鞍までスッキリと見渡せた。
 痛めた足の事を考えて、すぐ下れば好いものを、山頂での喜びに、時を費やし過ぎ、午後2時15分となってしまった。最上部の林道着が3時。足の痛みと往路で下った大斜面の上りを避け、大亦林道を歩いた。
 雪の林道を歩けども歩けども高度は上がらず、泣きたくなった。途中いろいろな斜面を登らず我慢して元の所からのルートを取って良かった。林道はきつかったが、大斜面から取り付いた大谷峰には意外と早く届いた。

 その大谷峰からの下りで、カンジキの紐を切ってしまった。後から考えたら大した事がなかったのに、その時は、頭の中がパニックになった。「これでは帰れなくなる」また 片方のカンジキで歩き失敗したりしてしまった。情けない!……・・

 やがて来る日没の恐怖だったのかもしれない。もう一回冷静になって、切れた紐でカンジキを縛りなおした。鞍部から再び洞山の頂上に着いたのは、5時20分。
 菓子パンと最後の水を口にして、先を急いだ。と言っても痛い膝故にカンジキとカンジキが重なり合って転倒したり、深みに足を取られて、また転ぶ状態が続いた。
 「早く、早く」「日が暮れる」と思いながら、必死に歩いた。反射板下の林道に着いた頃は、ちょうど6時で真っ暗だった。
 それからは、かすかな雪明りと今朝登ってきた道の感触で下るのだが、暗闇の障害物に何度も足を取られた。そして、最後の最後に雪を踏みぬき小川に落ちてしまい。膝から下を濡らしてしまった。長い長い一日だった。


《コースタイム》
高岡5:55→庵谷登山口(6:50~7:05)→第一鉄塔7:25→林道7:32→斜面取付(7:35~45)→反射板(7:55~8:05)→洞山頂上(9:05~15)→大谷961㍍峰(10:05~35)→大亦林道最上部(11:20~30)→西新山頂上(13:25~14:15)→大亦林道最上部15:00→林道迂回→大谷961㍍峰→洞山頂上(17:20~25)→反射板林道18:00→車18:30→高岡20:00