元   さ   ん  の  山  紀  行
牛  岳 (987㍍)
<富山県 庄川町 山田村 利賀村>
 平成16年09月27日




 3ヶ月ぶりの牛岳。O君の葬儀と重なったため、「北ちゃん」や「eiko女史」との赤谷山の計画を中止にしてもらった。今日も決してお天気が良くなく霧雨が降っている。山行が中止になっただけに、お天気が悪かった事に少し胸を撫で下ろしていた。
 一昨日に訃報を知り、昨日の通夜と同世代の友人を失ったやるせなさを、早朝の牛岳にぶつけたようなものである。葬儀は午前11時からであったが、1時間半程前に、会場入りしたかったし、汗をシャワーで流さなければならないし、同然着替の事などを考えると、遅くとも午前9時前に家に戻らなければならない計画になった。

 林道登山口まで37~38キロ、早朝なら40~45分程で行けるが、帰路のラッシュの事も頭に入れておかなければならない。標高差約600m山頂滞在時間を入れて往復2時間。計3時間半~4時間である。
 午前4時過ぎに起き、4時半出発を目論んでいたが、事前に準備をしていなかったせいや、暗がりで「山ノ神」に気付かれぬよう音をたてずに、そーっと行動をしていたために、随分と時間を要してしまい、出発が5時になってしまった。それでもまだ薄暗い中の出発である。

 登山道の濡れ具合や、下草の状態を想像するに、スパッツを装着する事にした。カメラに三脚、リックカバー、常備の非常用具、500mlのお茶などそう重くはない。準備運動もしないですぐ歩き始めたくせに、タイムトライアルが脳裏を掠めた。
 身体は未だ起きていない感じで、すぐ息があがってハーハ-となる。五合目まで10分以内、6合目まで24分以内でなければ自己更新は果たせない。気持ちでは黙々と歩くが、足がついていかない。6合目で27分も掛かってしまった。その時点で挑戦を諦める事にしたが、やはり無心では歩けない。
 雑念というか、次から次といろいろな事が頭に浮かんで来る。今日はやっぱりO君の事が多い。“ もうちょっと何かしてやればよかった。”“後からと言わず見舞ってやればよかった。” などなど・・・・。

 七合目付近や、八合目から九合目の晴れておれば、砺波平野が伺える所あたりが、下草が伸びていてズボンを相当濡らしてしまった。またその下辺りで、滑って転んでしまった。本当に私は何でもない所で転んでしまう。不注意というより足が上がっていないのだろう。
 自己記録を諦めたと言うものの山頂まで55分も掛かってしまった。もう6分も短縮するなんて出来ないかもしれない。空身なら・・・・などと欲が湧くが止めておこう。
 山頂からの展望は何もなかったが、お決まりの記念写真を撮り、お茶を飲んで早々に下る事にした。


86回目の山頂は霧雨の中 牛岳権現の祠の前で

 下り始めて12~13分後、風もないのにガサガサと音がした。何となく左前方に目をやると、黒い物体が樹木から降りて来るではないか?「くっ、熊~あ。」近距離である。一瞬ひるんでしまった。
 欲深い私は、とっさに右腰に手をやったがカメラがない。山頂を発つ時、早く帰らなければならないし、この霧雨では、撮る所もないであろうと、リックの中にカメラを仕舞い込んでいたのである。流石に、そこでリックを降ろしてカメラを出す勇気はなく、後ずさりして、陰になる所で始めてリックを降ろし、カメラとホイッスルを出した。ホイッスルを吹きまくった。
 何十秒、いや何分経ったかわからない。そうっと後ずさりした分だけ前に進んだが、熊は何処かへ去って行ってしまった後であった。やっぱり胸を撫で下ろしてしまった。八合目より1~2分山頂よりの所であった。





 ■■■コースタイム■■■
高岡5:00=林道登山口(5:35~45)=牛岳頂上(6:40~50)=林道登山口(7:50~55)=高岡8:50

 ■■■単独行■■■