元  ち  ゃ  ん  の  山  紀  行
大 日 岳 (2,501㍍)
<富山県上市町、立山町>平成14年09月09日



登山口
 今日は、母のショートステーが取れず、誰かが、自宅で母の面倒を看なければならない事から、「山ノ神」に頼み込んで、単独行が許された日であった。
称名滝方面
 先日、行き損なった「武尊山」や、アルペンルート特別割引の日だけに、室堂から大日連山を縦走して、称名に下るなどと、いろいろなパターンを模索していたが、天気予報がパットしない事を理由に、途中で引き返しても、悔いの残らない大日岳ピストンに切り替えた。
 「山ノ神」に、何も準備を頼まなかった事から、食料はコンビニで調達となったが、おにぎりとパンだけでは、チョット足りないのではないかと思い、朝食分として立山駅立ち食いソバを期待して、覗いて見たが、やっているのか、やっていないのか分からないまま、食事を遅らせれば何とかなると称名に向かった。

 駐車場には、前日からのものなのだろうか、数台の車が止まっていた。急な舗装した称名滝への道を歩き始めると、道路の真中にフェンスで、工事車両用と歩道を分けてあったが、山側の歩道をわざわざ歩く事もないと思って、車両用の谷側を歩いたが、その100㍍程先の登山口に着いた頃に、治水工事用のダンプが、下から2台上がって来た。叱られないで良かったと胸を撫で下ろした。
牛ノ首の岩場
 登山口から称名滝は見えないが、月曜日の早朝とあってか、称名川のセセラギの音以外には、静まり返って山深い印象を感じた。空は相変わらず雲に覆われているが、雨が降るとは思えなかった。
 つづら折の登山道を、足早に歩き始めたが、アキノキリンソウや、よく見かけるが私の知らない花を、デジカメで撮り始めると、どうしてもピッチが鈍る。
   大きなブナが現れると休息に適した「猿ヶ馬場」に出るが、その先を急いだ。次の標識は「牛ノ首」で、「称名1.67㌔・大日平1.75㌔」と表示してある。

大日平の木道 
奥が大日平山荘と天狗山
 ザクロ谷を左に見て、痩せた尾根に出れば、風がフーッと吹き、汗ばんだ身体は気持が良い。木の階段を二ヶ所過ぎると岩状の階段があり、階段の下にロープが施されている所を過ぎれば、大日平への木道が始まる。
 曇り空ではっきりではないが、称名川を挟んだ弥陀ヶ原方面の広い草原が見えてくる。
大日平山荘
 なおも風衝地帯を木道に沿って歩くと、その先に、大日平山荘、その奥に薄っすらと影絵のように、天狗山だろうか大きく見える。大日山荘に着いても、草原の先の稜線がガスに覆われて見えない。時折大日平の草原だけが全容にわたって姿を見せるが、すぐ視界を狭めてしまう。しかし、お天気が好転しているのか、一瞬日が差し、大日岳稜線が見え隠れし、反対方向の弥陀ヶ原ホテルや、立山荘が手が届きそうな位置に見えたが、また隠れてしまった。「大日岳3㌔・大日平0.8㌔」の沢で、木道が途絶えたかと思ったがまた続く。

 そのうち携帯が鳴る。「山の神」からで、“ 歯科医に行ったが、手におえないから、総合病院の口腔外科に行けと言われた。保険証は何処にあるか? ” と言うものだった。医学的知識に欠如している私の事だから、すぐ、手術なのだろうかなどと、悪い方に考えてしまい、何とか晴れないかと、山の事でいっぱいだったが、何時の間にか、“ 「山ノ神」に何かあったらどうしよう! ” などの事ばかりが頭を過ぎり、面白くなくなって来た。
 でも、こんな時はメチャクチャに歩くしかない。余計な事が考えられないように、身体を痛めつけるのがいい。
大日岳の稜線が見えた
 「水場近し」の看板から2分程行くと水場となり、稜線に青空が広がって来た。でも、大日平はガスで何も見えない。「大日岳へ1.9㌔」で沢を渡り、以後行ったり来たりで数回小沢を渡る。「最後の水場」に「大日小屋60分」の標識があり一休みしたが、ここが安心して飲める本当の水場のような気がする。
 先程の雲間から見えた青空も何処へ行ったのか知らないが、今日も剱岳を仰ぐ事だ出来ないのかと不安になってくる。最もお天気が悪いからこの山へ来たのだから、仕方がないのかもしれない。

鞍部から山頂へ
 大きな岩を回り込むような付近には、何という「アザミ」かわからないが、たくさん咲いている。あまりきれいな品種とは思わなかったから、カメラには収めなかった。大日小屋が見えて来ても、10分ぐらい歩かないと、大日岳と大日小屋の鞍部には出ない。
 稜線に出ても、剱岳側はガスのため何も見えず、予想はしていたものの寂しい思いにとらわれてしまった。僅かに山頂側の晴れ間が頼りなのだが、すぐにガスが消してしまい、タテヤマリンドウ、イワイチョウ、ウサギギク、ヨツバシオガマなどの名残の姿をデジカメに収めて気を紛らした。山頂から2パーティー7~8名の登山者が降りて来たが、今日はじめて出会った登山者だった。
ガスに覆われた山頂で
 山頂に立ってもガスに覆われて全く何も見えず、最近は大日岳からの剱岳の姿を忘れてしまいそうである。でも、登山者が去って誰もいない山頂で、お昼時の1時間を、ぼんやり過ごすのも、可笑しいと言われるかもしれないが、それなりに楽しいものである。
 お山の大将的気分なのだろうか、誰もがやって来れない聖地だからだろうか? 
 あの辺が剱岳、この辺が早乙女岳などと、無口な私が独りで、はしゃいでいる姿を、後から思い出すと何故か恥ずかしい! 帰路は、まず大日小屋に寄ってから下り始め、登りでは誰とも会わなかったのに、10人程の人達を追い越した感じになった。剱岳も見えず、只、歩いただけの山行となったが、充分満足出来る一日となった。




★★★コースタイム★★★
高岡5:55=立山駅(7:05~15)=称名P(7:25~40)=登山口(7:50~55)=猿ヶ馬場8:30=牛ノ首8:45=大日平山荘(9:30~35)=大日岳頂上(11:35~12:50)=大日小屋(13:05~15)=大日山荘(14:30~35)=牛ノ首15:05=猿ヶ馬場15:15= 登山口15:40=称名P(15:50~16:00)=高岡17:25

★☆★単独行