No.244 (H.21.03.02) 怒らせてみたのだが・・  


       人形山の山頂を目指すには、ちょっと出遅れた。
       田向から登山口まで、3時間を要したのは、織り込み
       済みであったが、登山道に入ってからの山ノ神の足取りが、
       急に減速してしまった。

       元々4時間しか持たない体力だけに、車中で、おにぎりを1ヶ
       しか食べられなかった時点で、「これはヤバイな!」 
       と思えた。

       歩く合間には、流動物しか喉を通さないから、ますますヤバイ。
       「山頂」 から「稜線」 に、目的地を下方修正。

       後には、「春木山まで」 にと、だんだん思いが萎んでいった。
       例年より、雪量が少ないだけ歩き易いと思うのであるが、
       足が上がらないようであった。

       「先に行きたい。」
       「適当に止めて、早く食べ物に有り付きたい。」
       口には出さぬが、お互い目を見れば分かると言うもの。

       私は、最後の手段を使った。
       怒らせる事である。

       イヤな事を、何気なく言うのである。
       「プ~ン」 と怒ったが、山ノ神には、いつもの元気がない。
       山ノ神の目は、「もう5時間も歩いたのだぜ!」 
       と言いたげであった。

       苦渋?の決断で、私だけが先に行くことにしたが、
       放っておくわけに
       いかないから、シェルターを造らなければならない。
       どんな事が起こるか分からないから、タープも張った。

       いつもなら、心配顔の山ノ神であるはずが、
       今日は、「行って来られ!」 であった。

       私が行くか行かないかの内に、コンロに火を点け、
       例の冷たいものを栓を抜いていた。

       一生懸命登る私に、「頑張れ!」 と声が掛かるが、
       それこそ高みの見物である。

       1時間半で戻れば、カップ麺とコーヒーを沸かしてくれたが、
       手持ち無沙汰からであろうか、「もう一本、持ってこれば
       良かった。」
       と、戯けた事を言っていた。(2本も飲んでいるのに・・・)

       「キャンプをすれば、もっと飲めたのにね。」
       低温であったが、キャンプには条件が良かった。

       「無理すれば良かったかな・・・」
       山ノ神は、担いでまで、飲みたくなかったのか・・・