No.249 (H.21.03.25) 鬼のいない間に・・・Ⅱ 


       山ノ神のいない4日間に私は決意した。
       山ノ神とは、24時間365日一緒で、近年は、
       休日も一緒なのである。

       拘束されているとは思っていないが、
       「何処へ行くの?」 「ちょっと遅かったね!」
       などと監視されている事は確かである。

       山用具は人並みにあるが、外出用の着衣や履物などは、
       無いに等しい。
       あるとすれば、慶弔用の礼服だけと言ってもいいくらいである。

       女性(にょしょう)と、何処かで、ラブラブなんて事は、
       あろうハズがない。
       もっとも、そのような風貌もなければ、軍資金などもない。

       日頃、山ノ神には、具の値も出ない私であるが、
       「暗黙の了承」 というのがある。

       「結婚前に知り合った女性とは、何の文句は言わない。」
       というものである。

       でも、山ノ神の目が怖くて、そのような機会もない。
       それどころか、会える当ての女性もいない。

       あったとしても、コーヒーが飲めるとか、
       食堂へ行ける程のお金も危ない。
       それはそれで、特別の感情を伝える女性もいないから
       いいのである。

       今回決心したのは、山ノ神と知り合う前に、
       好きになった女性との再会である。

       結婚しようと思っていた程の人であったが、突然私の前から、
       去って行き消息も分からない。

       私は、この4日(3晩)の間に、必ず会おうと思ったのである。
       山ノ神のいない内に・・・・   (邪魔されないように・・・)


       思いは通じるものである。
       Kちゃんが、私の目の前に現れた。

       何年も前に、タイムスリップしたようであった。
       Kちゃんは、昔と、ちっとも変わらぬ程若く、
       ニコニコばかりしていた。

       「コーヒー飲まないか・・・」 と言っても、笑ってばかり
       コッヘルとコンロを持っておれば、当たり前か・・・・・

       そのうち悲しい顔をして走り出した。
       「何処へ行くのか・・」、「また、逃げて行くのか・・」

       と私が必死になって追いかけた。
       突然、雨が降り出し、稲妻が走った。

       目の前に現れたのは、仁王立ちの山ノ神ではないか
       首根っこを、つままれ、「何をしているのか!」 
       と問い質された。

       「Kちゃんなら、良いと言ったじゃないか」 と言いながら、
       「わ~っ」 と目が覚めた。

       山ノ神は、こんなのでも浮気だという。