元   ち   ゃ   ん   の   山   紀   行

白馬岳(2,932㍍)  杓子岳(2,812㍍)
<富山県,長野県>  平成12年08月07日~08日




白馬岳のお花畑  (イワオオギ と タカネイブキボウフウ)
ミヤマキンバイの群落 ハクサンフーロとハクサンイチゲの群落 ミヤマキンポーゲの群落
シモツケ ウツボグサ ミヤマオダマキ ハクサンチドリ
ハクサンフーロ イワギキョウ ヨツバシオガマ ハクサンイチゲ
シナノキンバイ ミヤマキンバイ ウスユキソウ
ハクサンナデシコ ベニバナイチゴ オニユリ オニユリの蕾 ジャコウソウ
ウルップソウ クロユリ ハクサンコザクラ イワツメクサ イワギキョウ



白馬大雪渓を行く
 山を愛する人なら、富士山はともかく、一万尺の槍ヶ岳に何がなんでも登ってみたいと思うように、「白馬」の知名度、大雪渓とお花畑の連想から、白馬岳にも老若男女を問わず心引かれるのではなかろうか!
 家内も登れるものなら登ってみたいとの願望が強く、日頃からの山バカの罪滅ぼしを兼ねて夏場の最盛期を選んだ。
白馬大雪渓の中間点
 国道148号線から、大雪渓(八方尾根)の標識を目印に15キロ進んだ所に登山口の猿倉がある。
 それより手前、八方温泉の近くに、「猿倉駐車場満車」の標識が立ててあったが、少し考えた末、「日曜日の看板が未だ撤去されていないのではないか」、「もし満車なら戻れば良いじゃないか」と行ってみれば、かなり早い時間のせいもあって200台程収容出来る駐車場は、半分程しか埋まっていなかった。真夏とは言え、標高1230㍍ある猿倉の外気は冷たく、満天の星空を仰ぎながら車内で、そっと夜明けを待った。

白馬大雪渓上部
 夜明けと共に駐車場を出発するはずだったが、「日焼け止めクリーム」を忘れた事に気がつき、少々時間を費やしたが、好意ある登山者の中から借りる事に成功する。
 31年前の様相とそう違っているとは思えなかったが、山荘の左横から登山道に入ったが、確か以前の長い林道を歩いたその記憶が7分後には、現実となった。その林道は、さほど高度も稼がず25分も続き、終点には車が4~5台止まっていたから、やはり車の入れるところがあるのですね!

小雪渓の壁をトラバース
 再び登山道となり、右に大きな流れを確認しながら、小さな沢の橋を渡る。また、左右に小さな流れを見ながら、爽やかなくらいの水が、歩んで行く道に注ぎ込んでいる。やがて後方から陽を受けるようになった頃、白馬尻小屋が見えてきた。正面に三角の白い頂きが見えるが、無名峰である。
 標高1550㍍の白馬尻小屋は、一棟だけではなく、「白馬の大雪渓見学の観光客」を引き入れているようで大きなものであった。上部の小屋からは、角度的な事もあって、大雪渓の迫力は欠けるが、白馬岳頂上が右前方に荒々しく見える。

お 花 畑 で
 この先20分程進むと大雪渓の末端部に出る。白馬の駅や山小屋で買った軽アイゼンをここで付けるのだが、我家では、経費削減のおり、新たに軽アイゼンの購入をせず、愛用の一人分の装備(ピッケル、10本爪のアイゼン)で賄う事にした。他の登山者のアイゼン装着を横目で見て、滑り止め(アイゼンやピッケル)が、いるところまでそのまま登行した。勾配が出て来た所でアイゼン装着となる。家内の靴は私に比べてかなり小さく伸縮の効くアイゼンといえどもだぶつく様であった。
お花畑で遊ぶ
でも踵にも爪があるので、スリップせず、確実な歩行が出来るようであった。
 40分程歩いて雪渓が二分している所で休憩していると、今まで真っ青だった稜線上が、ガスに覆われてきた。それより先、50分程で大雪渓が切れた。皆アイゼンを外し、休憩の場となる。下方を見ると、ドンドン列を連ねて登山者が上がってくる。土日でもないのに、さすが「人気の全国区」なのであろう!
 その中に、同業のY氏の顔があるではないか。(過去、鹿島槍ヶ岳、赤岳、富山の大辻山の頂きで偶然にも出会った事がある。)
頂上小屋前で休息
Y氏は、天狗から唐松岳、八方尾根へのコースに思いを寄せていた。独り歩きの自由なコースは、羨ましい限りである。一息入れた後、雪渓の溶けた水がガラ場に流れ込む中を行く。葱平の始まりである。「今年は雪解けが二週間程遅くこの所いっぺんに花が開いた感じ」だと言う人達が多かった。そこを登り詰めると大きな岩に「小雪渓」と称してあった。大きな残雪の壁をトラバースしなければいけないのである。初心者の人、勇気のない人達は、オッカナビックリだったに違いない。
村営の頂上小屋


   これより先はお花畑の核心部である。グリーンパトロールの人達がお花の説明をしてくれたり、「しおり」の配布までしていた。その「山の花園」で雨になった。不思議なもので、あれだけ大勢の登山者がいると雨具が色とりどりで、雨具の原色がお花に勝ちそうなのである。
 村営の頂上小屋に着いた頃には雨が上がった。11時40分ここで家から苦労して持ってきた冷え頃も丁度よいビールを飲むか飲まないかになった。
 簡単な食事とやっぱり喉越のよいビールの誘惑に缶の栓を脱いでしまった。暫くのんびりしていると、今度は本格的な雨になり、山小屋の食堂に逃げ込んでしまった。

雷雨の白馬岳頂上
夕暮れの白馬岳頂上

   当初、頂上小屋に31年前に泊った事があるし、一昨年の10月中旬に蓮華温泉から日帰りで登った時、頂上から見た「白馬山荘」に今度はあそこに泊ろうと思っていた事もあり、この上の「白馬山荘」に宿泊を予定していたが、途中休憩時に頂上小屋の方が良いと幾つかの理由をあげて、熱心に薦めてくれた人があって心が傾いていた事と雨も手伝って「頂上小屋」にお世話になる事にした。
 「浅間」と名付けられている部屋でねぐらを確保し、明日のお天気は分からないから、取りあえず頂上を目指すことにした。宿泊するはずだった白馬山荘を過ぎる頃から、雨の強さはさほどでもなかったが、雷が鳴り出した。頂上に立った時は、人影もなく私達二人だけだった。雨の中でカメラには悪いが自動シャッターの間我慢をしてもらった。当然山頂からの展望もダメで、頂きに足を乗せただけになってしまった。

 びしょびしょになって部屋に戻ったら、相部屋になった新潟の二夫婦が小宴会で盛り上がっていた。WのT氏夫妻は、話し上手だったし、とても心優しい人達だった。食事を終え頃に雨が上がり、もう一度山頂を目指す事にした。夕日が沈む頃の剱岳がぐーっと浮かび上がり何とも言えない情景だった。久し振りの山小屋泊まりは、思ったより快適なものだった。最盛期で独りなら、キャンプもいいが、複数でなら重い荷物も担がないでもいい山小屋泊が最適!

 翌朝すこぶる良いお天気に思わず、山小屋の後ろの「丸山」に登った。素晴らしいご来光とはいかなかったが、それなりに満足するものだったが、昨日の小宴会での飲みすぎが原因らしく、胸がムカツキ朝食も取れないくらい憂鬱だった。
 WのT氏夫妻4人の一行は、頂上を極めたあと小蓮華、大池、栂池ルートで、猿倉へ下りられるらしく、またの再会を期待しながら、別ルートを進む事になる。私の体調も稜線に出てしまえば、もう大丈夫で、杓子、白馬鑓そして鑓温泉コースを取る事にしていたが、家内の膝の状態が今日も芳しくなく、大雪渓を下ることにした。 でも諦めが悪く、杓子岳だけでも登ろうと言う事になり、快適な稜線漫歩となる。こうなると白馬鑓ヶ岳も行きたくなり、思い切って鑓温泉に下ればとも思ったのだが、ここで危険のリスクを負うのと後々の山行にも差し支えるとの判断で、ユーターンをする事にした。勇壮な剱岳を充分に堪能する事が出来たし、愛らしいコマクサ等の高山植物にもお目にかかることが出来て本当に良かった。今一度頂上小屋に戻り、ヘリコプターの資材運搬作業を見入っていたり、アルバイトの女学生との山談義をしながらもう一杯気分の良い冷たいビールを飲み、名残は尽きないが、大雪渓目指して花園をゆっくりと下りた。雪渓の下りでは、家内の踵に爪のあるアイゼンが功を奏し、他の登山者のスリップを気の毒そうに眺めていた。
 しかし、林道に出てからは、とうとう足を引き摺ってしまった。帰路白馬の温泉にも入らず、家路を急いだ。

杓子岳と白馬鑓ヶ岳 丸山からの剱岳 杓子岳頂上で 雪渓下り終えアイゼンを外す


  《コースタイム》

 ・1日目
   高岡0:15→市振(1:40~45)→八方分岐2:50→猿倉(3:10~5:25)→林道に出る5:33→
   林道終点5:55→白馬尻小屋(6:16~32)→雪渓末端部6:53→雪渓分岐7:30→
   雪渓切れる(8:50~9:25)→小雪渓(9:55~10:05)→ 雨が降る
   11:00→頂上小屋(11:40~13:55)→白馬山荘14:13→白馬岳頂上(14:31~39)→
   頂上小屋(15:17~1810)→白馬頂上(18:40~19:00)
 ・2日目
   頂上小屋6:43→杓子岳(7:53~8:05)→白馬鑓ヶ岳との分岐8:13→
   頂上小屋(9:35~10:10)→小雪渓11:00→大雪渓上部(11:40~12:00)→
   雪渓下部(13:03~10)→白馬尻小屋(13:24~34)→猿倉(14:28~50)→
   アルペン村(13:55~14:10)→高岡17:45
                   〈 帰路 糸魚川~滑川間 高速利用〉